介護保険3割負担の導入。3割負担対象者はどんな人?
平成30年4月に介護保険制度が改正されました。
介護報酬改定とともに行われたこの制度改定については
こちらの記事でも紹介していますが、
訪問介護についていえば
・生活機能向上連携加算の拡充
・自立生活支援のための見守り的援助
・生活援助従事者研修
・生活援助サービス利用回数上限設定
などが注目されました。
そして、この8月にも介護保険制度については大きな変化がありました。
それがサービス利用時の自己負担での3割負担の導入です。
介護保険の自己負担の仕組み
まず簡単に介護保険制度のサービス利用時の自己負担の仕組みについてお伝えします。
介護保険制度は国民の保険料と税金とを主な財源とし、
市町村など各自治体で運用する社会保障制度です。
要介護(もしくは要支援)状態と認定された利用者が、
必要な介護保険適用サービスを利用した場合、
この介護保険が費用を負担し、サービス提供を行った事業者に報酬として支払われるという仕組みです。
ただ、サービスを利用する側も、サービス利用にかかった一部の費用を負担することになっています。
受益者が費用を負担することを応益負担といいます。
介護保険制度のスタート時は、このサービス利用者の自己負担の割合は原則1割でした。
制度スタート前、無償でサービス利用していた利用者が費用負担することになったケースも多く、
経過措置として低所得者に関しては自己負担が3%になることもありました。
それが、現在は所得が一定基準を上回る場合は2割負担、
そして平成30年8月からは現役並み所得者は3割負担と、
所得によって段階的に非常に大きな自己負担が課せられるようになりました。
つまり、現在はサービスによって得る利益に応じた負担を支払う応益負担という側面だけでなく、
支払うことのできる能力(所得)に応じた応能負担という側面も強くなった
応益負担・応能負担のミックスになっているのです。
なぜ?自己負担割合急増の理由
2割負担が導入されるようになったのもそれほど前の話ではなく、
平成27年の8月です。
その時に掲載した記事がこちらです。
まだ自己負担割合が増えることについて十分な検証もできていない状態にもかかわらず、
わずか3年後には3割負担を導入しています。
これは介護保険制度の当初の見込みよりもサービス利用者数が大幅に多く、
財源も不足していることから制度の維持ができなくなっているということが原因として挙げられます。
そもそもの制度設計時の問題があるのですが、
介護保険制度は自己負担1割でサービスを利用できるという名目でスタートしていながら
3割というのはまったく話が違うわけで、
「介護保険制度は国家的詐欺」と言われるのもわからなくもありません。
3割負担になるのはどんな人?対象者の所得は?
ここから本題で、では3割負担になるのはどんな人でしょうか。
すでに市町村などの保険者から負担割合証という自己負担割合が記載された書類が郵送で届いていると思います。
厚生労働省が発行している周知用のリーフレットから説明します。
利用者負担割合の基準が変わります(周知用リーフレット):PDF
3割負担対象者の条件は
前年の所得金額が220万円を超えることがまずひとつの基準となります。
そのうえで、
年金収入+その他の合計所得金額が
単身世帯で340万円以上、
二人以上の世帯であれば463万円以上
というのが条件となります。
厚生労働省が作成しているフローチャートで確認することができます。
年間の所得が変わらないことを前提に説明すると、
これまで1割負担だった利用者はそのまま1割負担で変更ありません。
これまで2割負担だった利用者のうち、所得上位の方が3割負担になると考えていただくとわかりやすいでしょう。
全体における比率でいうと、
1割負担:2割負担:3割負担 は
90:7:3 になるということです。
所得上位3%というのは地域によっては該当する人が多いという地域もあるでしょう。
今後、8月サービス利用分の請求からは3割の自己負担金額の請求書が届くことになります。
単純に(地域加算なしとして)一か月5,000単位分のサービスを利用している場合は
1割負担であれば自己負担5,000円(+サービスごとの加算・処遇改善加算等)のところ、
3割負担になると自己負担15,000円(+サービスごとの加算・処遇改善加算等)を支払わなければいけないわけですから、
非常に大きな負担になることがわかります。
これはもちろん訪問介護サービスでも例外ではありません。
ただ、自己負担を軽減するための制度もあります。
高額介護サービス費
高額介護サービス費はその利用者の所得状況に応じて、
一定の金額以上の自己負担が発生した場合、限度額を超過した分の自己負担分を
介護保険から支給するという仕組みです。
限度額以上の自己負担の払い戻しが受けられるというものです。
医療保険における高額療養費の介護保険版だと思うとわかりやすいかと思います。
所得によって設定される限度額は以下のようになっています。
設定区分 | 対象者 | 負担の上限額(月額) |
---|---|---|
第1段階 | 生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
第2段階 | 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) |
15,000円(個人) | ||
第3段階 | 世帯全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯(一定の場合、年間上限があります。) | 44,400円(世帯) |
3割負担に該当することになる方は第四段階という市区町村民税課税対象者になりますので、
自己負担が一か月44,000円を超えるサービス利用の場合は、超過分の払い戻しが受けられます。
また、年間の負担上限も設定されており、年間の上限446,400円(37,200×12ヶ月)が限度額となっています。
一か月、(地域加算なしとして)20,000単位分のサービスを利用した場合、
1割負担であれば20,000円(+サービスごとの加算分・処遇改善加算等)ですが、
3割負担であれば60,000円(+サービスごとの加算分・処遇改善加算等)の自己負担です。
この自己負担金額のうち、限度額内44,000円分は自己負担となりますが、
超過分の16,000円は市町村から払い戻しされることになります。
超過した支払いを行った後に、市町村から郵送で高額介護サービス費の払い戻しについての通知が届きますので、
手続きをしておけば指定の口座に払い戻し分が入金される仕組みとなります。
ただ、やはり経済的な負担が大きいことには変わりありません。
そして、この限度額についても見直しがされて、限度額が引き上げられることがあります。
訪問介護を含め、サービスを利用する方がそれだけの自己負担という対価を支払っているということも念頭に置いておきましょう。
介護保険の自己負担についての議論。今後はどうなる?
今回、3割負担が導入されましたが、
おそらく今後も介護保険の自己負担については国民により大きな負担を強いるようになることは間違いないでしょう。
いずれ原則1割負担を2割負担、3割負担に引き上げていき、
低所得者に対しては負担軽減策をとるという仕組みに移行していくと思われます。
すでに財務省ではそんな議論も行っています。
負担に見合う質の高いサービスが求められる一方、人材不足も深刻化しています。
訪問介護の現場は過酷な状況でもあるかと思いますが、
在宅介護を根っこの部分で支えるホームヘルパーは欠かすことができない存在です。
その自己負担に見合うサービスを提供しているという誇りをもっていただきたいと思います。
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