*

介護報酬の単価改正を読む(平成15年度版)。複合介護の廃止と家事援助の報酬引き上げ。

公開日: : コラム

介護報酬の単価改正を読む(平成15年度版)

報酬改定による在宅介護への影響は

厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会は、1月20日、
介護報酬の見直し案を介護給付費分科会に提示しました。

みなさんも注目の介護報酬の単価改正を特集します。

新聞紙上に載っている通りで、
見直し項目を全部あげたらキリがないので、

とりあえず、訪問介護に関するところだけおさらいしましょう。

大きく分類して3種類だった訪問介護の介護報酬ですが、
改正後は「身体介護」と「生活援助」の2種類に分類されます。

それでは、具体的な単位数の変更を見てみましょう。


身体介護

○身体介護
現行改正後増減
30分未満210231
1時間未満402402
1時間半未満584584
以降30分毎に21983

身体介護ですが、30分未満のサービス、
いわゆる巡回型と呼ばれるサービスの単価が上がっています

短い時間のなかで、的確な判断や対処が求められるサービスであり、
それだけ専門的なサービスという要素が強い側面を持ちます。

またここには記載されていませんでしたが、

夜間・深夜巡回型の単価も引き上げられる模様です。

採算性に合わないため、
見送る事業者が多かった24時間巡回サービスも発展する可能性を持ちます。

巡回型というものの特殊性に注目した単価改正とも考えられるのでは?

それと、注目して欲しいのが

1時間半未満以降の30分毎の加算ですが、
現行での+219単位が+83単位まで引き下げられます

この+83単位は「生活援助」の単位数と同じです。

つまり、身体のサービスをしていようと家事のサービスをしていようと、
1時間半を過ぎたらもう同じです。

例えば、
3時間未満の身体介護サービスで入っているとすると、

現行では、584+219+219+219(単位)で1241単位。

改正後は、584+83+83+83(単位)で833単位です。

その差408単位。単純に1単位を10円としても、4080円。

身体介護で長時間の依頼がきたら喜んで飛びついていた事業者さんたちも
これは慎重になりますよね。

みなさんの中で通院介助や散歩など長時間の身体を受け持っている方

収入に影響がないとは言いきれないですよね。

生活援助

○生活援助(家事援助)
現行改正後増減
1時間未満153208
1時間半未満222291
以降30分毎に8383

家事援助の単価引き上げがこの改正の大きなテーマであったわけで、
結果、55単位のベースアップという形になりました。

それが大きいか小さいかはみなさまの判断に任せます。

個人的な話、
「生活援助」という呼称で決定しそうな勢いですが、

以前あった「生活支援」っていうネーミングのほうが好きだったな。

「自立支援」っていう介護保険のテーマに密接な感じがしてて。

おっと・・・

そう、忘れていませんか?複合介護。

現行の複合型介護サービスは、
身体介護か生活援助のどちらかのサービスに振り分けられます

で、その振り分けに関する記述が不明瞭なので、

今後はそこに焦点が移ると思われます。

もし、ケアマネや利用者が選択する形となれば、

その多くは単価の安い生活援助を選ぶという見方が強くなっています

となると、
生活援助に振り分けられる複合型介護は

○複合型介護→生活援助
現行改正後増減
1時間未満278208
1時間半未満403291
以降30分毎に15183

実は軒並み介護報酬が引き下げられています。

単価引き上げばかりだと思われた介護報酬改正、
これはある意味、数字のトリックですね。

新聞紙上でもこの単価改正に関して、

「家事援助大幅引き上げ」と報道されていますが、

実際のところ、
サービス全体の25%を占める複合型介護サービスの振り分けいかんで
介護報酬は引き上げにも引き下げにもなりそうですね。

その他

それから、

ケアマネは毎月一回利用者さん宅への訪問が実施されないと
ペナルティを課せられるようになりました。

利用者さんが40人とかいるケアマネさんは
今ごろ戦々恐々としていることでしょう。。。

その他、介護報酬の変更に関する情報はこちらへ。

WAM NET

改正以後(後記)

改正以後。

厚生労働省の思惑から大きく離れ、
訪問介護事業所の多くは「複合型介護」のほとんどを
「身体介護」へ移行させています。

※参考 ニチイ学館の第一四半期、営業利益率が改善

このような実体の無い「身体介護」によって、
多くの事業所は報酬改定を乗り切り、
大手各社は改定以前より軒並み2~3%の増収という、予想外の結果を生んでいます。

平成15年 掲載

アドセンス336

関連記事

生活援助の利用制限についてもう一度考える

生活援助の利用制限についてもう一度考える 2006年の介護保険法の改正に伴い、訪問介護の生活援助

記事を読む

介護保険と支援費制度の統合論、そのねらいは

介護保険+支援費制度=??? 連日、メディアを騒がす介護保険の抜本改革のニュース。 歯止めの

記事を読む

どう変わる、働き方改革法スタート

介護の働き方改革。有給休暇、残業時間、ホームヘルパーの働き方はどう変わる?

「令和」時代の働き方 平成31年度がスタートしました。新元号「令和」の発表で幕を開け

記事を読む

ホームヘルパーとは何か

ホームヘルパーとは何か? ホームヘルパーとは、肉体的・精神的に日常生活を送るのに支障のある高齢者や

記事を読む

介護保険抜本的見直しの焦点、介護予防について

「介護予防」を探る 介護保険制度の抜本的見直しを前に、さまざまな問題が浮上していま

記事を読む

准介護福祉士

准介護福祉士とは、誰のための・何のための資格か?

准介護福祉士とは 社会福祉士・介護福祉士法の見直しの中で、突然振って沸いてきたかの

記事を読む

混合介護のイメージ図

訪問介護が変わる?介護保険改正の切り札、混合介護とは?

平成30年の介護保険制度改正・報酬改定に向けての議論が本格化する中で、 議論の一つ「混合介護」に注目

記事を読む

要介護認定調査

要介護認定見直しの大混乱。二転三転する判断基準。

平成21年要介護認定見直しの大混乱 平成21年度になり、要介護認定が変わりました。

記事を読む

介護報酬改定の影響は

平成26年介護報酬改定。消費増税に伴う介護報酬の改定の概要。

消費税増税に伴う平成26年介護報酬改定の概要 平成26年4月に消費税の増税が行われます

記事を読む

要支援者へのサービス廃止へ?介護保険改正でホームヘルパーの仕事はどう変わる?日常生活総合支援事業とは

要支援者へのサービス廃止へ?介護予防サービスと介護予防・日常生活総合支援事業。どうなるホームヘルパー

記事を読む

アドセンス336

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

アドセンス336

令和3年介護報酬改定、逆風の訪問介護
訪問介護の基本報酬、増えたのは1単位だけ!?逆風の報酬改定を斬る。

令和3年4月介護報酬改定、訪問介護はどうなる? 令和3

慰労金、ホームヘルパーはもらえるの?
ホームヘルパーは、もらえる?もらえない?新型コロナウイルス慰労金。

介護従事者等への慰労金とは 新型コロナウイルス感染対策

介護関連書籍のススメ2020

新型コロナウイルスの拡大による自粛要請。 遊びに行くことも、飲

新型コロナウイルス感染拡大
新型コロナウイルスに立ち向かう。ホームヘルパーがウイルスから身を守るために。

新型コロナウイルスの感染は世界規模で拡大 新型コロナウ

ホームヘルパーにおすすめ、最強の雨対策グッズ3つ
雨の日の訪問も楽しくなる。ホームヘルパーが用意するべき最強の雨対策グッズ3つ

梅雨、それはホームヘルパーの天敵。 関東地方も梅雨入り

→もっと見る

PAGE TOP ↑