*

新型インフルエンザの脅威にホームヘルパーはどう向き合うか。

公開日: : コラム

新型インフルエンザの脅威

マスクをする女性

猛威を振るい続ける新型インフルエンザの脅威。

7月以降のインフルエンザ患者数は11月27日現在で1000万人を超え、
一週間あたりでの定点医療機関の受診者数でも既に昨冬のピークを上回っています。

世界的にも死者は8000人を超えているものとみられており、
それでなお、まだまだ衰える兆しを見せていません。

感染者の傾向としては、低年齢化が進み、
当初懸念されていた60歳以上の感染者は国内全感染者およそ1000万人のうちの
わずか10万人にとどまっています。

しかし、新型インフルエンザ流行の波紋は、訪問介護の現場にも確実に押し寄せています

訪問介護は、この新型インフルエンザといかに向き合うべきなのでしょうか。


深刻な人手不足

職員がインフルエンザに感染するということは、訪問介護事業所にとっては大きな痛手です。

それだけではありません。

職員の家族がインフルエンザに感染することで、濃厚接触者である家族を出勤停止にするケースも増えています。

もちろん、感染した子供の看病の為に欠勤せざるを得ないケースもありますが、
そうでなくても、ウイルスを媒介する可能性が高い場合は事業所の判断として、
感染者の解熱後2~3日までそのスタッフを出勤停止にする場合があります。

一週間近くスタッフが欠けるわけですから、慢性的な人材不足の傾向にある訪問介護事業所にとっては大きな痛手です。

もちろん、勤務するスタッフにとっても、時間給が大半を占めるホームヘルパーですので、
収入が得られないことはヘルパー自身の生活にも大きな影響を与えます。

ホームヘルパーの大半が学齢期もしくはそれ以下の子供を持つ主婦層であることもあり、
家族が学校などで感染するというリスクを避けることができないのです。

短期入所・通所介護の代替サービスとしての訪問介護

新型インフルエンザで日本中が混乱していた平成21年5月20日、
厚生労働省老健局などから、都道府県宛にこのような通知がありました。

短期入所、通所施設等において臨時休業を行う場合の当面の対応について、以下のとおりお願いします。

(1)介護サービス事業者等における対応

臨時休業を行ったときは、確認事項Q&A(平成21年5月16日新型インフルエンザ対策本部幹事会)のとおり、居宅介護支援事業者・訪問介護事業者を含め、
関係事業者間で連携の上、必要性の高い利用者を優先しつつ、訪問介護事業者等が代替サービスを提供するようお願いします。

つまり、短期入所や通所介護などのサービスが臨時休業などで利用できない場合、
訪問介護事業者が代替サービスを提供するようにという一文になります。

もちろん、地域のセーフティネットとして、訪問介護の果す役割は大きいということが確認されます。

しかし、訪問介護事業者自体がそういった状況下にあるのにも関わらず、
介護保険の枠組みの中でスポットでサービス提供を行うというのが、事業者やヘルパーにとってどれだけ大きな負担になるのか。

ケースによっては、調査、契約、担当者会議、ヘルパーへの引継ぎ・・・といった業務も必要となります。

施設というハコを持たない訪問介護の柔軟性は、今回のような危機的な状況でも大きな存在感を発揮するものであり、
それを再認識した上で、人材確保のための報酬の見直しを求めていくことも必要ではないでしょうか。

日本ホームヘルパー協会では厚生労働省に対して要望書を提出し、
マスク等の備品購入の費用負担軽減や、ヘルパーが媒介しての感染による免責、前述の代替サービスでのマニュアル整備などを求めています。

いずれにせよ、少なくとも今後数年間、インフルエンザは訪問介護事業所を悩ます大きな問題となるでしょう。

その最前線にいるホームヘルパーはまず感染予防として自分の身を守ることを徹底していきましょう。

平成21年11月30日掲載

アドセンス336

関連記事

24時間地域巡回型訪問介護サービスとは

地域包括ケアの柱としての新サービス「24時間地域巡回型訪問介護」 2012年4月の介護

記事を読む

報酬改定による在宅介護への影響は

介護報酬の単価改正を読む(平成15年度版)。複合介護の廃止と家事援助の報酬引き上げ。

介護報酬の単価改正を読む(平成15年度版) 厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会は

記事を読む

高齢者イメージ

「痴呆」に替わる用語、「認知症」

「痴呆」に替わる用語、「認知症」 「痴呆」という言葉がなくなる。 厚生労働省が発表し

記事を読む

どこまでできる?ホームヘルプの利用制限について考える。

ホームヘルプサービスはどこまでできるのか? 平成22年4月28日、厚生労働省老健局振興課からこんな

記事を読む

要介護認定調査

要介護認定見直しの大混乱。二転三転する判断基準。

平成21年要介護認定見直しの大混乱 平成21年度になり、要介護認定が変わりました。

記事を読む

ホームヘルパーの給料、ホントのトコロ

ホームヘルパーの給料・時給・月収など、平均値などから見るヘルパーの待遇について 現在、訪問介護事業

記事を読む

介護保険改正総点検、平成18年改正で何が変わる?

介護保険改正総点検(平成18年介護保険改正版) みなさんもご存知のとおり、介護保険の抜

記事を読む

生活援助の利用制限についてもう一度考える

生活援助の利用制限についてもう一度考える 2006年の介護保険法の改正に伴い、訪問介護の生活援助

記事を読む

来日したインドネシア人

インドネシアからの外国人介護労働者受け入れへ

インドネシアからの外国人介護労働者受け入れへ 介護の現場に外国人労働者がやってくる。 そんな話

記事を読む

3割負担導入、3割負担になるのはどんな人

介護保険3割負担の導入。3割負担対象者はどんな人?

平成30年4月に介護保険制度が改正されました。 介護報酬改定とともに行われたこの制度改

記事を読む

アドセンス336

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

アドセンス336

令和3年介護報酬改定、逆風の訪問介護
訪問介護の基本報酬、増えたのは1単位だけ!?逆風の報酬改定を斬る。

令和3年4月介護報酬改定、訪問介護はどうなる? 令和3

慰労金、ホームヘルパーはもらえるの?
ホームヘルパーは、もらえる?もらえない?新型コロナウイルス慰労金。

介護従事者等への慰労金とは 新型コロナウイルス感染対策

介護関連書籍のススメ2020

新型コロナウイルスの拡大による自粛要請。 遊びに行くことも、飲

新型コロナウイルス感染拡大
新型コロナウイルスに立ち向かう。ホームヘルパーがウイルスから身を守るために。

新型コロナウイルスの感染は世界規模で拡大 新型コロナウ

ホームヘルパーにおすすめ、最強の雨対策グッズ3つ
雨の日の訪問も楽しくなる。ホームヘルパーが用意するべき最強の雨対策グッズ3つ

梅雨、それはホームヘルパーの天敵。 関東地方も梅雨入り

→もっと見る

PAGE TOP ↑