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介護福祉士の給料が8万円増えるって本当?新しい処遇改善加算のウソと本当。

介護福祉士の給料が月8万円増える、という噂の正体

介護福祉士の給料が8万円アップ?

新しい経済政策パッケージ

「介護福祉士の賃金が8万円増える?」

これは政府の行う「人づくり革命」と銘打った「新しい経済政策パッケージ」において実施される介護職員の処遇改善の内容です。
消費税を増税することによる税収分を、保育や介護の分野に投入することを平成29年12月に政府原案として発表しています。

まずはこの経済政策パッケージの内容について、原文から確認してみましょう。

第二章人づくり革命の中、5番目の項目に「介護人材の処遇改善」があります。

新しい経済政策パッケージ[pdf]

5.介護人材の処遇改善

(具体的内容)
人生100年時代において、介護は、誰もが直面し得る現実かつ喫緊の課題である。政府は、在宅・施設サービスの整備の加速化や介護休業を取得しやすい職場環境の整備など、これまでも介護離職ゼロに向けた重層的な取組を進めてきたところである。安倍内閣は、2020年代初頭までに、50万人分の介護の受け皿を整備することとしているが、最大の課題は介護人材の確保である。介護人材を確保するため、2017年度予算においては、介護職員について、経験などに応じて昇給する仕組みを創り、月額平均1万円相当の処遇改善を行うなど、これまで自公政権で月額4万7000円の改善を実現してきたが、介護人材確保のための取組をより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める
具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円程度を投じ、処遇改善を行う。
また、障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行う。
(実施時期)
こうした処遇改善については、消費税率の引上げに伴う報酬改定において対応し、2019年10月から実施する。

このように、新しい処遇改善加算についての提案がなされています。
この内容、いくつかのポイントに絞ってみていきましょう。

そもそも介護職員処遇改善加算とは?

そもそも、介護職員処遇改善加算とは何か。
少しおさらいをしてみましょう。

介護職員の人材不足の深刻化が社会問題化していた2009年、
訪問介護事業所に支払われる介護報酬とは別に、
キャリアパスなどの要件を満たす訪問介護事業所に交付金という形で上乗せされたのが
介護職員処遇改善交付金でした。
これは介護職の平均賃金が他の産業の賃金と比べて低いことから、
その格差を埋めることで介護職員の定着を目指すという目的で行われたものです。

その場しのぎのばら撒きという批判の多かった介護職員処遇改善交付金は、
安定的な報酬の確保につながらないため、介護職員の給与の改善には結びつかず、廃止され、
介護報酬体系の中に加算という形で組み込まれるようになりました。
これが現在議論されている「介護職員処遇改善加算」です。

その後、処遇改善加算の上乗せという形でこの加算は拡充されてきた結果、
介護職員の賃金は上昇しているといわれていますが、
それでも他の産業との賃金格差もあり、
いまなお人材不足は深刻さを増しているという状況にあります。

産業別の有効求人倍率

勤続10年以上の介護福祉士という条件について

今回の処遇改善で示されたのが処遇改善を「経験・技能のある職員」へ「重点化」することでした。
その経験・技能のある職員の条件として提示されているのが、10年勤続という基準です。

第163回社会保障審議会介護給付費分科会資料

第163回社会保障審議会介護給付費分科会資料

勤続年数10年の介護福祉士、これはかなり高いハードルですけれど、
果たしてこれを満たす介護職員がどの程度いるのかという問題ですね。

介護の仕事の場合、女性労働者が多く、結婚や出産、親の介護といったライフイベントの影響を受けて退職や転職をするということが多く、
長く働き続けるのは難しいという事情があります。

また、介護事業所を対象に行った「介護労働実態調査(平成28年度版)」をみても、
介護職員の離職率の高さという問題があげられています。

訪問介護員、介護職員の1年間(平成27年10月1日から平成28年9月30日まで)の採用率・離職率=離職率は16.7%

表は見てのとおりですが、離職率は16.7%
離職者のうちのおよそ40%は一年以内の退職という数字があらわすように、
やはり入退職のサイクルが非常に激しい業界であるということにもっと目を向けなければいけないと思います。

もちろん、介護福祉士として介護業務をしていたとしても、
大手の企業で10年働いていれば本部等にポストを与えられて
現場からは退いているというケースも少なくありません。
ケアマネや社会福祉士の資格を取るなどして相談職として勤務をするケースも非常に多いです。

介護現場の仕事は肉体労働というと語弊がありますが、体力を使うことは間違いありません。
体を使う分、疲労や腰痛なども含めた事故が起こりやすい職場でもあります。

また、退職理由の最も大きなものは、
職場の人間関係に問題があったため」という項目が最も大きく23.9%。
職場内の人間関係に強いストレスを感じ離職する方が多い現状はまったく改善されていません。
日本中どこを見ても人手不足な介護職という専門職、国家資格である介護福祉士であればなおさら希少人材ですので、
離職しても転職先を探すこと自体は苦労しないということも離職しやすさにつながっていると考えられます。

いずれにしても、10年間、同じ職場で介護職として勤務し続けるということはかなり高いハードルであることは間違いありません
はたしてそれに該当する人数をどのくらいと見積もっている政策なのか疑問に感じます。

8万円も給与が増えるか?

給料袋

では実際10年勤続したところで8万円も給与が増えるのか、という問題です。
これまでの介護職員処遇改善加算とは別枠で新しい加算として設定するということですが、
今回の政策に関しても加算である以上、
上乗せされる金額はいったん事業所に介護報酬上の加算という枠組みでいったん支払われます。
従来の処遇改善加算と同様、増額分すべてが職員の手取りになるわけではありません

この加算による増収分の事業所内での配分については、
人材のプライオリティのルール化」を行うことが示されています。
つまり、増収分の何%は勤続10年ベテラン介護福祉士に配分、といったルールが設定されそうです。
人材のプライオリティについて、ルールを外から設定されるというのは気持ちいいものじゃありませんよね。

若くても貴重な人材もいれば、
長い期間法人に所属していても勤務時間や勤務日数などを考えれば法人に対する貢献はそれほど大きくないという場合もあります。
ルールに関してどこまで柔軟性を持ったものに設定されるかはわかりませんが、
事務的な作業はかなり大きくなりそうですね。

中年女性

これまでの処遇改善加算とは別枠

現在、検討が行われている内容としては、
これまでの介護職員処遇改善とは別枠で新たな加算として今回の処遇改善を行うというものでした。
そのため、運用の取り扱いなどもまったく異なるものになる見込みです。

たとえば、
加算の増収分を介護職員以外の職員(施設であればケアマネや栄養士などの職種)の給与を上乗せすることは可能なのか、
といった意見が出ています。
もちろん、プライオリティのルールの中では、
最優先は勤続10年以上のベテラン介護福祉士
それに次いでそれ以外の介護職、
そして3番目として法人内のそれ以外の職種として割り当てることも案として示されています。
そうなると、例えば施設ケアマネはこの処遇改善の恩恵は受けられるけれど、
単独居宅介護支援事業所のケアマネはその恩恵を受けることができないなど、不公平も生まれます。
ケアマネ職が加算を受けることには否定的な見解が強いようですが、どのような運用になるのか注目してみたいですね。

介護職として現場で10年働いていたのに、急に相談員やケアマネに配置換えになったらこのルールも適用されなくなってしまうわけですから、
当然不公平感は出るでしょう。

1法人で勤続10年以上の介護福祉士を業界10年へ

また、別の法人を渡り歩いて10年間介護職として勤務した場合はどうかという意見もあります。
例えば、法人が吸収合併することなどもあります。
コムスンやジャパンケアなどのように、別法人に吸収や統合されるなどといったケースも少なくありません。
また、本人の都合で転職したとしても
経験や技能は同じ法人で10年勤務することといくつかの法人で10年勤務することと比較して、
同一法人で10年続けた方が技能や経験が高いという証明にはなりません。
むしろ、転職などを通して様々な法人で勤務した方がそれぞれの良さや様々な利用者と対応する機会が多く、
技能や経験を積み上げやすいと考えることもできます。
家庭の事情などで転居するなどして職場を変えなくてはいけないケースなどもあるわけですから、
やはり同一法人であることを要件にすることはそもそもおかしいと考えるべきでしょう。

とりあえず言えることは、
いま法人で10年勤務しているベテラン職員が離職する・もしくは別職種への配置換えを行うということは、
大きな痛手だということですかね。

まとめ

・介護職員の処遇改善を経験・技能のある介護福祉士に重点化、月額8万円相当の処遇改善を行う方針。
・同一法人で勤続10年というハードルはかなり高く、該当数は少ないのではないか。
・複数法人を渡り歩いた業界10年の介護福祉士は同一法人の10年勤続と比較して経験・技能に劣るのか。
・処遇改善加算とは別枠の加算として設定。別職種への処遇改善など、運用面については今後、議論されていく。

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