*

介護保険と支援費制度の統合論、そのねらいは

公開日: : 最終更新日:2014/01/22 コラム

介護保険+支援費制度=???

連日、メディアを騒がす介護保険の抜本改革のニュース。

歯止めのかかることのない少子高齢化と経済不況。

財源不足に苦しむ介護保険の存続は風前の灯。

そこに飛び込んできた「支援費制度との統合論」。

果たして、支援費制度との統合にはどんな意味があるのか、
じっくり考えてみましょう。


支援費制度

支援費制度の概要についてはこのコーナーで以前取り上げたとおり、

財源を税金に依存した障害者の自立支援・自己決定尊重のための制度です。

【支援費制度を考える】
【支援費制度と人権問題】

障害者福祉と高齢者福祉。

専門性が相違、が強調されてきたそのふたつの制度が

2005年の介護保険抜本改革を機に統合されるという、
驚くべきシナリオが生まれていました。

見直しを迫られるふたつの制度

今回の介護保険支援費制度統合論の根底にあるのは財政問題です。

介護保険は急激に利用者数を増やし続け、現在、利用者数はおよそ300万人にも及びます。

利用者増に伴い、給付費も膨らみ続け、財政的な負担も加速度的に増しており、

2003年、介護保険の保険者のうち赤字になった自治体は170団体にも及びました。

深刻な財源不足に悩まされ、介護保険の破綻という将来的な推測も
次第に現実味を帯びてきているのが現状です。

高齢社会のピークとなる2025年には給付費は19兆円に達する見通しです(現在は5.5兆円)。

それに対して、支援費制度は財源の全てを税金に依存しています。

支援費制度もサービス利用は当初の予想を大きく上回り、
大幅な予算不足に陥っていました。

「福祉切捨て」が横行する中、現状のまま支援費制度を維持することは
難しいととらえざるを得ません。

見直しを迫られた「介護保険」と「支援費制度」。

「介護」というキーワードから、
このふたつの制度を結びつける動きが活発になりました。

そして、今回のふたつの制度統合における最大の狙いは
介護保険の被保険者の拡大です。

介護保険では「40歳以上」に限定されていた被保険者を

支援費制度と統合することで、被保険者の年齢による制限を撤廃し、

全ての成人(20歳以上)から保険料を徴収するというものです。

介護保険と支援費制度の違い

ここで、介護保険と支援費制度について、
制度上の比較を行ってみたいと思います。

  介護保険 支援費制度
保険料負担 65歳以上:第1号保険者
40歳以上:第二号保険者
 
としての負担あり
なし
申請 要介護認定の申請 利用したいサービスごとの申請
訪問調査の内容 心身の状態・医療に関する70項目から
自立度の調査
障害程度区分及び
支援の必要度・家族の状況・生活の困難さ
などの勘案事項
認定審査 保険・医療・福祉等の
学識経験者を加えて設置
市町村によって設置は自由
認定・決定 要介護度の認定 居宅支援費:サービスごとの量
施設支援費:生活程度区分 を決定
利用上限 介護度による利用上限あり 原則的にはなし
更新期間 6ヶ月 居宅:1年
グループホーム:3年
利用計画の作成 ケアマネが本人家族と相談の上作成 本人
利用の調整 本人・ケアマネ 本人・必要に応じて市町村
利用料負担 応益負担(利用サービスの1割) 応能負担
扶養義務者負担 20歳未満世帯主・
20歳以上配偶者及びその子
なし
在宅サービス ホームヘルパー
デイサービス
ショートステイ
福祉機器の貸与
住宅改修
ホームヘルパー
ガイドヘルパー
デイサービス
ショートステイ
グループホーム
施設サービス 特養
老健施設
療養型医療機関
通所(更生・授産)
入所(更生・授産・療護・通勤寮)

※ 参考

疑問あり!介護保険統合論―どこへ行く支援費制度
井上 泰司 伊藤 周平 障害者生活支援システム研究会
かもがわ出版 (2004/04)
売り上げランキング: 53,360
通常24時間以内に発送

このように、ふたつの制度には多くの相違点を見出すことができます。

統合する場合にはそのギャップを埋め合わせていかなければいけないのですが、

そのなかで注目されているのは、
サービス利用の負担に関する問題です。

支援費制度ではその経済能力に応じて負担していた応能負担でしたが、

介護保険ではサービス利用の1割分の負担を課せらる応益負担になります。

障害基礎年金に依存する障害者にとって、

経済的な負担は非常に大きくなり、必要としているサービスを受けられなくなります。

厚生労働省では、減免措置などを検討しているということですが、

応益負担の導入によって障害者のサービス利用を抑制することにつながると思われます。

サービスの質

そして、もうひとつ考えなければいけないのは
介護保険と支援費制度におけるサービスの質の違いです。

支援費制度では「介護」だけではなく、

障害者の社会参加なども位置づけており、
介護保険とは違った性質を持っています。

障害関係団体からは障害者サービスの特殊性を前面に出し、
統合に疑問を投げかける声が強くなっています。

見通しの甘さ

様々な問題点を含みつつも、制度統合は進められ、
2004年6月25日社会保障審議会障害者部会でも
支援費制度の「介護保険との統合は選択肢のひとつ」という報告がまとめられました。

2005年の統合を目標に
攻勢労働省を中心に急ピッチで会議が重ねられ、計画を進めています。

確かに支援費制度を制定する段階で
将来的に介護保険を組み込むことも視野に入れていました。

しかし、支援費制度が開始されて、わずか一年余り。

計画の時点での見通しの甘さが浮き彫りにされました。

それは介護保険も同様です。

制度を計画し、実施にいたるまでの準備期間が短かったことが
その大きな要因と考えられます。

しかし、今回の介護保険・支援費制度統合も準備に時間をかけず、
先のふたつの制度以上に急ピッチで計画されています。

介護保険・支援費制度の犯した失敗を繰り返さないよう、

準備期間を十分に用意し、当事者を含めた様々な団体などからの意見を広く受け付け、
十分な見通しを立てて実施に踏み切るべきだと考えられます。

最新情報は以下のリンク先などからチェックしてください。

支援費の介護保険への統合を考える(日本障害者協議会)
全国自立生活センター協議会

追記

介護保険と支援費制度の統合は、
20歳以上に負担者層を拡大することに対する経済界等の反対によって、
2006年の統合に関しては撤回されました。

が、2009年を目標に統合の準備は進められており、
再び大きな議論となると予想されています。

また、障害者福祉でも、介護保険との統合を見据えて、
一割の応益負担を導入した自立支援法が施行されます。

平成16年 掲載

アドセンス336

関連記事

スペシャルオリンピックスとは

スペシャルオリンピックスとは 介護保険とは一切関係なさそうですが、 今回はスペシャルオリンピックス

記事を読む

3割負担導入、3割負担になるのはどんな人

介護保険3割負担の導入。3割負担対象者はどんな人?

平成30年4月に介護保険制度が改正されました。 介護報酬改定とともに行われたこの制度改

記事を読む

支援費制度とサービスについて

支援費制度と人権問題。措置から契約への転換と生きる権利。

支援費制度と人権問題 障害者問題は、人権問題であるといっても過言ではありません。 人

記事を読む

報酬改定による在宅介護への影響は

介護報酬の単価改正を読む(平成15年度版)。複合介護の廃止と家事援助の報酬引き上げ。

介護報酬の単価改正を読む(平成15年度版) 厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会は

記事を読む

新しいカリキュラムはどうなる?

新資格。介護職員基礎研修ガイドラインについて

介護職員基礎研修ガイドラインについて 「介護の資格、介護福祉士に一本化」でお伝えし

記事を読む

介護保険負担割合証

訪問介護の自己負担が2割になる人、ならない人。

平成27年4月に行われた介護保険法の改正。 すでに新しい報酬単価が適応され、すでに日常生活自立支援

記事を読む

男性ヘルパーの憂鬱。男性ホームヘルパーの需要と活躍の場。

男性ホームヘルパーの憂鬱 近年、介護の仕事につく男性が増えています。 不景気のため、

記事を読む

高齢者イメージ

「痴呆」に替わる用語、「認知症」

「痴呆」に替わる用語、「認知症」 「痴呆」という言葉がなくなる。 厚生労働省が発表し

記事を読む

高齢者夫婦

介護保険法を読み返す。介護保険法解説と介護保険サービスのあり方について。

介護保険法を読み返す 今回のテーマは「介護保険法」です。 介護保険、介護保険といいな

記事を読む

新型インフルエンザの脅威にホームヘルパーはどう向き合うか。

新型インフルエンザの脅威 猛威を振るい続ける新型インフルエンザの脅威。 7月以降のイ

記事を読む

アドセンス336

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

アドセンス336

どう変わる、働き方改革法スタート
介護の働き方改革。有給休暇、残業時間、ホームヘルパーの働き方はどう変わる?

「令和」時代の働き方 平成31年度がスタートしました。

インフルエンザに負けない!ホームヘルパーの感染予防
インフルエンザ対策!ホームヘルパーの感染予防。予防接種は?罹患者への訪問はどうする?

今年も猛威を振るったインフルエンザ。 2月に入って罹患

介護福祉士の給料が8万円アップ?
介護福祉士の給料が8万円増えるって本当?新しい処遇改善加算のウソと本当。

介護福祉士の給料が月8万円増える、という噂の正体 新

3割負担導入、3割負担になるのはどんな人
介護保険3割負担の導入。3割負担対象者はどんな人?

平成30年4月に介護保険制度が改正されました。 介護報酬

選ばれる事業所運営の鉄則
介護関連書籍のススメ2018

このタイトルで記事を書くのはすごい久しぶりですが、 いくつかぜひ紹介

→もっと見る

PAGE TOP ↑