「障害者虐待防止法」について、
私、toto職人が若手介護職員研修グループ「若手の福祉会議」にて
報告した内容をそのまま掲載します。
現在、「障害者虐待防止法」制定に向けて、与野党の動きが見られています。
自民は矢代英太特別委員長を中心に法案のたたき台作りを行い、
公明・民主との法案のすりあわせを行い、
早ければ年内に法案がまとまる方向性でしたが、
解散総選挙など、政治は大きな混乱の中にあり、
先行きはまだまだ不透明です。
2000年に制定された児童虐待防止法、
今国会で提出された高齢者虐待防止法、
その流れを受けてのものといえます。
この法案には身体・知的・精神の障害各分野が含まれています。
ただ、高齢者も障害者も守るべき人権って本来みんな同じものだと思うので、
法律であえて分ける必要があるのかどうかは、
考える必要があるかもしれませんね。
障害者の歴史は、いまだに「人権侵害の歴史」から抜け出せないでいます。
有名な事件として、ナチスドイツが行った大量虐殺。
一説には20万人とも言われる障害者が国家によって大量虐殺されました。
その後、国際的な批判を受けることになります。
福祉国家として有名なスウェーデンでも、強制不妊手術が行われていたことは、
ショッキングなニュースとして報道されました。
いずれも、「優性思想」から生まれています。
社会にとって、国家にとって有益な人間を優先し、
優秀な遺伝子を残すという優性学は、
福祉国家と相反する思想であるといえますが、
福祉国家であるスウェーデンでもこのような虐待が行われていたのです。
日本では、その歴史の中で「障害者」が登場するのは
それほど古い話ではありません。
座敷牢などといわれるように、多くは社会に出る機会がなかったためです。
近年、有名な事件では、「水戸アカス事件」。
水戸市のダンボール加工会社「アカス紙器」社長による知的障害の従業員に対する虐待です。
暴行に関しては、金属の棒・角材・バットなどでの殴打、
手錠をかけて放置する、10人近い女性従業員へのレイプなど、
その虐待は陰惨なものでした。
後に、TBSドラマ「聖者の行進」のモデルとなりましたが、
あくまでフィクションとして制作されたドラマであったため、
社会へのインパクトは少なかったものの、虐待という存在を社会に認知させることになりました。
次に「サングループ事件」。
滋賀県の肩パット加工会社で、同様に知的障害の従業員に対するもので、
年金や預金の搾取、暴行などが行われ、死者・行方不明者も生まれている事件です。
昨年、発覚した福岡県頴田市での知的入所施設「カリタスの家」での虐待は、
虐待に関する全てを網羅した凶悪なものでした。
その内容を簡単に紹介します。
現在、カリタスの家では、
理事全員が引責辞任し、再出発を始めています。
が、書類不備が多数、
入所に関する契約書がある利用者は31人中3人のみだったとのことで、
福岡県による適正な監査が行われていなかったことが指摘され、
行政の責任として問われています。
この「カリタスの家」事件がひとつの引き金となって、
障害者虐待防止法の議論が現実的になってきたため、
家庭内の虐待というよりも、施設内での虐待を前提して法案は作成されます。
いくつか、防止法制定の意義をまとめてみます。
障害福祉施設では
従来、「しつけ」という名目で行われていた虐待が多数存在します。
が、身体拘束や隔離も認めない(例外規定が盛り込まれるかは不明です)とすることで、
今まで公然と行われていた虐待という名の「必要悪」が禁止されます。
新しい方法論を求められる施設が多くなるでしょう。
相談窓口として、障害者虐待防止センターが設置されます。
これは、福祉事務所などに併設も可能となるそうです。
地域における虐待防止の中心として、人的・経済的資源があてられます。
全ての市民には、
虐待を見つけたら通報しなければならない、という通報義務が課せられます。
家族・ボランティアもちろん職員も含めて、
虐待防止に取り組んでいくことを求めています。
ということで、障害者虐待防止法の意義が挙げられます。
余談ですが、虐待の起こる施設の特徴として、
職員間の仲がとてもいいことがあげられます。
職員同士がなあなあで馴れ合いの関係が生まれていると、
虐待に対する抑止力が働かなくなります。
虐待を虐待といえる職場環境が必要なのではないでしょうか。
介護職の仕事は言い換えれば「人権擁護」です。
援助者が対象者の人権を侵害することは本来あってはならないこと、なのです。
以上。
この内容は、私、toto職人。が
若手介護職の研修グループ「若手の福祉会議」において
2005年8月に報告したものです。