支援費制度と人権問題。措置から契約への転換と生きる権利。
公開日: : コラム
支援費制度と人権問題
障害者問題は、人権問題であるといっても過言ではありません。
人権という観点を除いては、障害者福祉を考えることはできないでしょう。
支援費制度導入で揺れる障害者福祉。
ここで、「人権」という観点から
支援費制度の導入について考えてみたいと思います。
自由権と社会権
基本的人権には大きく分けて2種類のものがあります。
「自由権」と「社会権」です。
自由権とは、表現の自由、身体の自由、経済活動の自由などを規定しているものです。
社会権とは、生きる権利、労働する権利、教育を受ける権利などが含まれます。
歴史的には、18世紀、
国家の抑圧に苦しむ国民が市民革命の末に勝ち取ったのが自由権です。
封建的な君主政治から、主権が国民にある近代国家が生まれました。
国民の自由に関する権利は公共の福祉に反しない限り、
奪われるものではないということを規定したのが自由権です。
しかし、その弊害として、
自由競争のなかで極端な貧富の差が生まれました。
自由権では、国家は消極国家、夜警国家が理想とされましたが、
国民の生命や平等を維持するために、
国家が積極的に介入をするべきだという福祉国家論が生まれました。
福祉というのは、そのうちの「社会権」にあたります。
社会的弱者を救済するという意味合いから障害者福祉も生まれました。
しかし、自由権に関しては障害者に与えられる自己決定権を著しく剥奪する
「措置」という制度のもとに管理されました。
自由権の生みの親、J・ロックは
自由権を行使できるのは理性の備わった市民のみとしています。
つまり、教育を受けていなかったり、金銭に余裕がない人には
自己決定能力が備わっていないとして、権利を制限しました。
現在までの障害者福祉も同様に、
自己決定能力の欠如を理由に、自由権を制限していました。
措置制度では利用するサービスを自由に選択することもできませんでした。
近年、障害者の人権が声高に叫ばれるようになりました。
それは主に障害者の「自由権」を求める発言でした。
障害者にも自己決定能力が備わっており、
権利を行使するだけの能力が備わっている、というのがその根拠でした。
人権屋と呼ばれるような運動家たちは人権の損害であるとして、
措置制度の撤廃を求めました。
こうして生まれたのが「支援費制度」です。
支援費制度と社会権
支援費制度が導入されることになり、
晴れて障害者もサービス契約の自由という権利を獲得するようになりました。
と、本当にそうでしょうか。
利用者にはサービスを選択する権利はあっても、
選択できる環境はなく、
実質的にはその権利はほとんど行使できません。
問題の本質は措置制度にあるのではなく、
社会資源やサービスなどの環境にあることが明るみになりました。
逆に、この支援費制度導入で
自由という名の元に、社会から放り出されてしまい、
生存権の危機にさらされる利用者も少なくないと想定されます。
「自由権」を求めて獲得した支援費制度の枠組ですが、
逆に「社会権」も奪ってしまう結果にもなりかねません。
いま、日本の障害者福祉は重大な岐路に立たされています。
障害者の生きる権利を守るのは行政の仕事ではなく、
私たちの生きる地域社会全体なのですから。
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