2006年の介護保険法の改正に伴い、訪問介護の生活援助サービスに制限が加えられました。
同居家族がいる家庭での生活援助サービスを一律に制限する自治体が続出しました。
2009年の介護報酬改定に関する議論が過熱する今、もう一度、生活援助サービスのあり方を考えるべきではないでしょうか。
そもそも、介護保険の改正で、生活援助が制限されたのはなぜか。
それは、生活援助(当時は家事援助)サービス利用者の要介護状態が改善・維持されず、むしろ悪化しているというデータに基づくものです。
しかし、これは、もとをただせば、島根県の一地域の7800人という限られた対象をもとにしたデータであって、 そのデータの正確さについても疑問が残ります。
まして、要介護状態はサービス利用以外の様々な要因から、時間の経過と共に悪化するのが自然なわけですから、 要介護状態と生活援助サービスの利用との因果関係は何ら証明されていないというのが妥当でしょう。
しかし、現実に生活援助サービスには制限が加えられ、同居家族がいる場合の生活援助が一律に行えない自治体が続出しました。
指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)を根拠に、 自治体が同居家族のいる利用者の生活援助の利用を認めなかったのです。
厚生労働省が提示した、生活援助サービス利用者像は以下のようなものでした。
単身の世帯に属する利用者または家族もしくは親族(以下「家族等」という。)と同居している利用者であって、 当該家族等の障害・疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるもの
ひどいことに、半径500メートル圏内に親族がいる場合は、それを同居家族とみなす自治体もあったそうです。
その結果、サービス利用者数は、高齢者・要介護者が続々増えているはずのこの国で、2006年は減少するという、 極めて不自然な現象が生まれました。
生活援助のサービスが、前年比で3分の1も少なくなったのですから、 その犠牲になった人がたくさんいたはずです。
家族介護の負担を、社会化していくことが介護保険の目的だったはずなのに。
厚生労働省は、先日、生活援助の一律での制限は自治体による行き過ぎた規制であり、
生活援助の適用範囲は、個々の利用者の状況に応じて判断するようにという通知を行いました。
しかし、生活援助利用に関する基準はどこにもないわけですから、サービスに踏み出せない事業所が圧倒的多数となるでしょう。
厚生労働省の見解としては、ホームヘルパーによる生活援助を切り捨させ、 自費負担での家事代行サービスなどを利用することを想定しているようです。
しかし、近年の高齢者の平均的に見れば経済的に豊かに見えるかもしれませんが、 その貧富の格差は大きいのが現状です。
低所得の高齢者が、どんな生活をして、どんな食事をしているのか、 ホームヘルプの現場にいる人たちであれば、誰でも知っているはずです。
厚生労働省は、そういった現実をまったく見ることができていないのです。
短期的には、介護給付費の抑制という、大きな結果をあげたのかもしれません。
しかし、サービスを利用できなくなった軽度の利用者は、 生活援助サービスで提供されるはずだった安定した食生活や生活のリズム、さらに社会とのつながりを失い、 その要介護状態を大幅に悪化させることになるかもしれません。
生活の基礎を支える生活援助サービスこそが、介護予防の観点からも最も重要な要素であるはずです。
また、サービスの制限により、利用者の状態の変化に早期に気づく機会も失われてしまいます。
結果として、高齢者人口が増えるこれからの社会に、重度の高齢者がますます増えてしまい、 介護給付費が増大するという矛盾も含んでいます。
長期的視点を持って、社会全体で支える介護システムの再構築を目指し、 生活援助サービスの必要性をもう一度見直すべきときが来ているのではないでしょうか。
平成20年2月18日掲載