*

要支援者へのサービス廃止へ?介護保険改正でホームヘルパーの仕事はどう変わる?日常生活総合支援事業とは

公開日: : コラム

要支援者へのサービス廃止へ?介護予防サービスと介護予防・日常生活総合支援事業。どうなるホームヘルパー。

平成25年度に入ってから、厚生労働省の社会保障制度改革国民会議の場などで、
要支援認定者のサービスを介護保険の給付から市町村の事業へと切り離すことについての議論がされています。

要支援認定された利用者は、従来の介護保険サービスは利用できなくなり、
市町村による介護予防・日常生活総合支援事業という事業の枠でサービスが利用できるとしていますが、
現実的には事業としての受け皿の整備が全く進んでいない中での制度変更は、
軽度者切り捨てのための制度変更でしかありません。

それでは、実際にこの方針通り、予防給付が介護予防・日常生活総合支援事業に移行した場合、
訪問介護サービスがどのようになっていくのかを解説していきたいと思います。


介護予防・日常生活総合支援事業とは

まずは、介護予防給付が廃止された場合の受け皿となるべき、介護予防・日常生活総合支援事業について紹介します。

介護予防・日常生活総合支援事業とは、地域の独自のニーズに対応し、生活支援のためのサービスを提供する事業で、
要支援認定者や非該当者でも利用できるのが特徴です。

栄養改善のための配食や見守りなども含めて生活支援を多様なサービス提供者で支えていくということです。

以下のような特徴をもったサービスになるとのことが示されています。

  • 要介護認定において「要支援」と「非該当」を行き来するような高齢者に対する、切れ目のない総合的なサービスの提供
  • 虚弱・引きこもりなど介護保険利用に結び付かない高齢者に対する円滑なサービスの導入
  • 自立や社会参加の意欲の高い者に対する、ボランティアによるこの事業への参加や活動の場の提供
  • 生活支援の必要性が高い要支援者に対する、地域の実情に応じた、生活を支えるための総合的なサービスの提供
介護予防・日常生活総合支援事業について:厚生労働省(pdf)

ただ、実際は、「要支援」と「非該当」を行き来する介護保険サービスの利用者はごく稀で、「要介護」と「要支援」を行ったり来たりすることの方がはるかに多くなっています。

従来の要支援・要介護を行き来するというだけでも担当変更やサービスの制限で支障が生じているのに、
予防給付のサービスが使えなくなると、要支援と要介護の境界線にいる人たちの混乱はさらに大きくなるでしょう。

月初には当然のように区分変更申請が洪水のように市町村窓口に押し寄せ、事務量に加え、主治医の意見書・認定調査という手数料ばかりが膨らんでいくことでしょう。

また、生活支援のためのサービスを提供するのは、インフォーマルな支援も可能とし、提供者も有資格者に限定されません。

つまり、ホームヘルパー(介護職員初任者研修修了者)が訪問するのも、ボランティアが訪問するのも、同じという事業の枠組みで、要は誰でもいいということです。

訪問介護の専門性を真っ向から否定されているということです。

今回の方針に至る過程でも、生活援助サービスが自立支援に役立っていないという発言が何度も見られました。

そもそも根拠すらも提示されないままで、それを鵜呑みにしていていいのでしょうか。

ホームヘルパーに求められる役割とは

ホームヘルパーの目指すべき姿とは

今回、要支援を切り捨てる方針が示されましたが、介護給付費の中で、要支援者を対象にしている予防給付は全体の5%程度です。

将来的に高齢化のピークがやってくることで金額は増えていくとしても、
膨らみ続ける介護給付費のうち、わずか5%を切り離したところで、介護保険財政を立て直すのには不十分です。

この先に待っているのは要介護1・要介護2という要介護のうちの軽度認定者のサービスの制限だと思われます。

最も認定者数の多いのがこの要介護1と要介護2であり、施設入所もできるので、介護給付費は非常に大きな金額になっています。
こういった部分の切り崩しを視野に含めていることは間違いなさそうです。

利用者自己負担のアップとともに、訪問介護の生活援助サービス自体を保険対象外にしていくという案も提案されています。

となると、介護保険でのホームヘルパーの役割は、
重度な方への身体介護などのサービスの要素が強くなっていく
ことが予想されます。

介護度が重い状態でも在宅で暮らしている方へ提供する身体介護の技術、
在宅での医療的ケアの実践力、
そして家族や連携する事業所への提案力などの専門性が求められていくのでしょう。

平成25年7月6日掲載

アドセンス336

関連記事

准介護福祉士

准介護福祉士とは、誰のための・何のための資格か?

准介護福祉士とは 社会福祉士・介護福祉士法の見直しの中で、突然振って沸いてきたかの

記事を読む

介護保険抜本的見直しの焦点、介護予防について

「介護予防」を探る 介護保険制度の抜本的見直しを前に、さまざまな問題が浮上していま

記事を読む

専門介護福祉士(仮称)とは?そのカリキュラムと専門性について

専門介護福祉士(仮称)とは 以前からこのサイトでもお伝えしているように、介護従事者の資

記事を読む

要介護認定調査

要介護認定見直しの大混乱。二転三転する判断基準。

平成21年要介護認定見直しの大混乱 平成21年度になり、要介護認定が変わりました。

記事を読む

ホームヘルパーとは何か

ホームヘルパーとは何か? ホームヘルパーとは、肉体的・精神的に日常生活を送るのに支障のある高齢者や

記事を読む

インフルエンザに負けない!ホームヘルパーの感染予防

インフルエンザ対策!ホームヘルパーの感染予防。予防接種は?罹患者への訪問はどうする?

例年猛威を振るうインフルエンザ。 インフルエンザの集団感染で入退所やショートステイ受

記事を読む

生活援助従事者研修が決定!生活援助専門ヘルパー誕生へ

生活援助従事者研修課程、59時間カリキュラムの全容。生活援助専門ホームヘルパーの養成課程。

この記事のまとめ ・生活援助中心型サービスの担い手として、生活援助従事者研修課程を創設

記事を読む

支援費制度とサービスについて

支援費制度と人権問題。措置から契約への転換と生きる権利。

支援費制度と人権問題 障害者問題は、人権問題であるといっても過言ではありません。 人

記事を読む

地域のネットワーク

障害者虐待防止法とは

障害者虐待防止法とは 「障害者虐待防止法」について、 私が若手介護職員研修グループ「

記事を読む

ホームヘルパーの医療行為について

医療行為の壁を越えて 今回のテーマは、介護職による「医療行為」について。 なぜ、介護

記事を読む

アドセンス336

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

アドセンス336

令和3年介護報酬改定、逆風の訪問介護
訪問介護の基本報酬、増えたのは1単位だけ!?逆風の報酬改定を斬る。

令和3年4月介護報酬改定、訪問介護はどうなる? 令和3

慰労金、ホームヘルパーはもらえるの?
ホームヘルパーは、もらえる?もらえない?新型コロナウイルス慰労金。

介護従事者等への慰労金とは 新型コロナウイルス感染対策

介護関連書籍のススメ2020

新型コロナウイルスの拡大による自粛要請。 遊びに行くことも、飲

新型コロナウイルス感染拡大
新型コロナウイルスに立ち向かう。ホームヘルパーがウイルスから身を守るために。

新型コロナウイルスの感染は世界規模で拡大 新型コロナウ

ホームヘルパーにおすすめ、最強の雨対策グッズ3つ
雨の日の訪問も楽しくなる。ホームヘルパーが用意するべき最強の雨対策グッズ3つ

梅雨、それはホームヘルパーの天敵。 関東地方も梅雨入り

→もっと見る

PAGE TOP ↑