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平成27年介護報酬改定。未曾有のマイナス改定は訪問介護に影響するか?

公開日: : コラム

介護報酬改定。訪問介護の報酬単価はどうなった?

介護保険のサービス提供に伴って発生する介護報酬は3年に一度見直しがされることになっており、
今回、平成27年4月改定の介護報酬単価案が厚生労働省から発表されました。

介護給付費分科会審議会資料 平成27年介護報酬改定の概要(案) :PDFファイル

この資料をもとに、介護報酬改定が訪問介護にどのような影響をもたらすか、確認していきましょう。

未曾有のマイナス改定、その背景

介護報酬削減、訪問介護は

まず最初に、今回の介護報酬改定をめぐる全体的な流れについてですが、
消費税の増税が見送られたこともあって、膨張し続ける介護保険財政を含めた社会保障費を確保することが難しい状況となりました。
また一方で、特別養護老人ホームや小規模のデイサービスの利益率が高いというデータ(データ自体の信憑性は定かではありませんが)から、
介護報酬の適正化が図られることとなりました。
そこで、財務省から介護報酬を大幅に削減する案が提案され、
最終的には全体でマイナス2.27%の削減をするという数値が設定され、
今回(平成27年2月6日)各サービスごとの具体的な報酬単価案が発表されました。
「儲けすぎている」とみなされたのは小規模のデイサービス、グループホーム、そして特別養護老人ホームで、
今回の報酬改定では予想通り大幅な報酬単価の削減となり、経営が困難になる事業所もでてくることが予想されます。

さて、その一方、訪問介護サービスはどうなったのかを見てみましょう。

報酬改定による訪問介護サービスへの影響は?

それでは訪問介護サービスに設定された報酬単価について、詳しく見ていきましょう。

身体介護が中心である場合

所要時間改定前改定後
20分未満171単位165単位
20分以上30分未満255単位245単位
30分以上1時間未満404単位388単位

いわゆる身体介護のサービスですが、
今回、20分未満のサービスの算定要件が変更され、
かなり限られた条件下でないと算定ができないことになりました。
短時間サービスについては、あくまでも24時間定期巡回随時対応サービスへの移行を前提にしており、
同サービス事業所以外では20分未満のサービスを算定することはおそらくないでしょう。

1時間のサービスについてみてみると、
404単位から388単位に16単位もダウンしています。

また、通院時乗降介助も
改定前の101単位から97単位に4単位分の報酬削減となっています。

生活援助が中心である場合

続いて生活援助の場合です。

所要時間改定前改定後
20分以上45分未満191単位183単位
45分以上236単位225単位

生活援助も同様に報酬単価自体は削減されています。
45分未満で8単位のマイナス、
45分以上で11単位のマイナス。
もともと単価の小さい生活援助サービスですが、
さらに削減されているという印象です。

処遇改善加算

訪問介護も大幅に報酬が削減されているか、というと、
必ずしもそうとは限りません。
今回、介護職員処遇改善加算については上乗せがされていますので、
これを確実に算定することがまずは重要です。
訪問介護サービスの場合、改定前が最大4%の加算を受けることが出来たのですが、
今回の報酬改定では8.6%の処遇改善加算を受けることが出来ます
これが加算として介護報酬に付け加えられますので、
加算を含めた介護報酬自体は改定前と大きく変わりません
地域加算なども変更されていますので、条件が異なる場合もありますが、
処遇改善加算をしっかり算定できているのであれば大幅な収入減ということは避けられます。
もちろん、処遇改善加算という名目で利用者の自己負担もあるわけですから、丁寧な説明と同意は必要です。

介護予防訪問介護

要支援の利用者を対象とした予防訪問介護についても単価の変更があります。

利用回数改定前改定後
週1回1226単位/月1168単位/月
週2回2452単位/月2335単位/月
週3回3889単位/月3704単位/月

自治体によっては日常生活自立支援総合事業に移行を進めているところもあるかと思います。
介護予防訪問介護の単位数は改定前よりも削減されており、
今後の総合事業への移行も見越して、介護報酬を削減している部分もあるのかもしれません。
処遇改善加算を算定していても、週1回利用の利用者で一カ月当たり66円程度は事業所の減収になるでしょう。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

24時間サービスの定期巡回随時対応型訪問介護看護も報酬改定されています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(I)(訪問看護サービスを行わない場合)及び
定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(II)

要介護度改定前改定後
要介護16,707単位/月5,658単位/月
要介護211,182単位/月10,100単位/月
要介護317,900単位/月16,769単位/月
要介護422,375単位/月21,212単位/月
要介護526,850単位/月25,654単位/月

ここでは訪問看護を利用しない場合(訪問介護部分のみ)の報酬単価を掲載しました。
定期巡回サービスについては要介護ごとに単位数が決定されますが、
いずれにしても大幅に削減されています。
処遇改善加算を含めてもマイナスの改定になります。
ただ、通所サービスを併用する場合にかけられる報酬の減算単位数が軽減されましたので、
使いやすいサービスにはなっていっているかもしれません。
それでも重度の利用者に関しては特養の報酬単価とほとんどかわらないというこの介護報酬が適正なのかどうか、
議論が分かれる部分ではないでしょうか。

特定事業所加算

新設された加算についてですが、
特定事業所加算(Ⅳ)が新たに設定されています。
ただ、算定条件が難しく、特に、
「利用者総数のうち、要介護3以上、認知症自立度Ⅲ以上の利用者が60%以上であること。【重度対応要件】」
という要件を満たすことはなかなか難しいと思われます。
特殊な事業所でなければ、事業所側が利用者を選ぶということはなかなかできませんので、
依頼を受けていく中で要介護度や認知症自立度の割合を調整するということは難しいのではないでしょうか。

その他の加算・減算

それ以外に、
・訪問介護員2級課程修了者であるサービス提供責任者に係る減算の取り扱い(90%→70%)
・生活機能向上連携加算の拡大 
・集合住宅に居住する利用者へのサービス提供(事業所が同一敷地内でなくても、1月あたり20人以上の利用者が居住する同一建物(有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅などに限定)での減算)
などが変更となっていますので、ご注意ください。

通所サービスの送迎時介助の項目について

また、もう一点、注意してほしいのが通所サービスへの送り出しやお迎えのために行う訪問についてです。
通所サービス共通の項目の中にこのような内容が記載されています。

送迎時における居宅内介助等の評価
送迎時に実施した居宅内介助等(電気の消灯・点灯、着替え、ベッドへの移乗、窓の施錠等)を通所介護、通所リハビリテーション又は認知症対応型通所介護の所要時間に含めることとする。

つまり、通所の送迎時に、これまで訪問介護でヘルパーが行っていたデイサービスへの準備や、到着後の身体介護を
通所の職員が代わりに行うケースが出てくることが予想されます。
小規模のデイサービスは特に今回の報酬改定では大幅な減収となっていますので、
送迎の到着順の一番最後に独居の利用者を配置し、通所側でこのような介助を行うことも想定されます。
この場合、ケアマネによるプランの変更が前提になりますが、
この制度変更により、利用者減の可能性もあることを理解しておきましょう。

訪問介護サービスの将来

今回の報酬改定では、処遇改善などを含め、きちんと取るべき加算などを算定している訪問介護サービス事業所にとっては
他の事業形態に比較すれば大きな損失ということにはならないでしょう。
ただ、今後、要支援の利用者は介護予防自立支援総合事業へ移行することになり
そこで報酬が大幅に低くなると予想される新事業に対応するのか、
それとも予防よりも中重度化に対応した訪問介護サービスに重点を置くのか、
訪問介護サービス事業所もひとつの分岐点に立たされることになるでしょう。

また、訪問介護サービスが高い専門性を必要とされるサービスであり
ボランティアや配達などのサービスで代替することが出来ないものであることを証明できるよう、
ホームヘルパー全体の質の向上も目指すことが重要になってくるでしょう。

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Comment

  1. […] すが、 処遇改善加算をしっかり算定できているのであれば大幅な収入減ということは避けられます。 [引用元] 平成27年介護報酬改定。未曾有のマイナス改定は訪問介護に影響するか? […]

  2. 通りすがりの より:

    ひどいねこの改定は。介護福祉は儲けてはいけないって言っちゃったら誰もやらないよ。処遇改善なんかも、賞与減らして充てるので結局変わらないし。働いてるのはみんなパートだよ。質もとめても無駄だよ。介護難民増えるねこれは。

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